7歳の夏休み

2011-1-26

活字… というか、図書館の静まり返った雰囲気が大好きだったわたしは、
週末には外で遊ぶより図書館に一日中入り浸っているような子どもだったのですが
そんな7歳の夏休みのある日、偶然手に取った本が
今思えば、初めて「自分の好きな世界」を自覚した作品でした。

それが、なかえよしを作・上野紀子絵『まどべのおきゃくさま』という絵本。
ワンダーランドと呼ぶにはあまりに寂寥としたもうひとつの空間。
ページをめくると、夢の向こうに広がっていたのは、
息を呑むような虚無の世界。
それが、7歳のわたしには他のどんな童話よりも魅力的に映ったのでした。

とにかくその年の夏休みは、この不思議な世界から抜け出せず
使ったこともない水彩絵の具を持ち出して
物語の続きを毎日描いてみたり、
主人公がそうしたように窓際に鉢植えを置いて転寝をしてみたり、
宿題の読書感想文をこの本で書いてみたりと
あらゆる手を尽くして、この作品の世界への憧れを表現したのを覚えています。
そんな凝り性なところは、今も変わりません。

以来、この物語がわたしの原点となって
現在の活動へと続いているのですが
先日、ある方に紹介していただき、作者のお二人にお会いすることが出来たのです。

お二人の代表作というと、
ねずみのキャラクターが主人公の『ねずみくん』シリーズが有名ですが
わたしにとっては『まどべのおきゃくさま』のような
シュールな世界を描いた作品こそが代表作。
ねずみくんの世界にも通ずるところはあるのですが
表現の隔たりが大きくて、
最初は同じ作者の作品と気付かなかったほどでした。

お会いしたのは、とあるカフェで開催中の「ねずみくんの原画展」で
会場では『わたしと魔術師』など
今では絶版となっている大変貴重な作品を読むことができ
ますますお二人の作り出す世界に引きずり込まれてしまいました。

さらに、作品の原点となった洋書にまつわるエピソードや、
美術評論家の瀧口修造氏との交流についても、
お話をうかがうことができました。

上野さんに「女の子のモデルはいるのですか?」とたずねたところ
「こんな暗い女の子にモデルはいませんよ」とのことでした。
暗い…といえば、10歳の頃、絵本を薦め合うという遊びをしたときに
とっておきのオススメ本として『まどべのおきゃくさま』を挙げたら
友達には「怖い…やめとく」と断られたことがあったっけ。
変わりに『世界の奇病全集』を薦めたら、
なぜかそっちには食いついてたのだけど。。。

今回の個展で入手することが出来た貴重な自主制作本。
たくさん売るためではなく、作りたくて作ったという
究極のコンセプチュアルアート『ペラペラの世界』は
セロファンに印字されていて、とても読みにくい絵本。

お二人は、とっても素敵なご夫妻でした。
お会いできて、本当にうれしかったです。
ご紹介していただいた主催者様、感謝いたします。

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